コナン君の好きな人





「なあ、蘭ちゃん。・・・コナン君いてへんの?」

 そう言ってきょきょろと病室内を見回すのは、遠く大阪から蘭の見舞いにやってきてくれた友人、遠山和葉。

(・・・この質問してきたの、これで何人目だっけ・・・?)

 蘭がこの病院に入院してから4日目の土曜日。
 一人部屋の病室のベッドで、上半身を起して笑顔で和葉を迎えた蘭は、しばらくの間は話題のつきない会話を楽しんだ後の和葉のその問いに、内心で小さく苦笑する。

「あー、コナン君ねー・・・なんかひどい風邪引いちゃったみたいで、阿笠博士の家で預かってもらってるのよ。わたしがこんなだから、うちにいても看病してあげられないし・・・」
「・・・へー・・・」

 納得しているのかいないのか微妙な相槌を打つと、和葉は再び病室中をぐるりと見回す。
 そしてまた一言。

「なーんか、コナン君が蘭ちゃんのそばにいてへんのって、変な感じやなー」

 その言葉に、再び苦笑。
 なぜならここ数日の間に、似たような台詞をもう何人もの人たちに言われているから。

(・・・わたしたちって、そんなにいつも一緒にいるって思われてたのかなあ・・・?)

 毛利蘭のいるところ江戸川コナンあり、という現象は、実は二人の周囲にはかなり浸透している事実であったりするのだが、知らぬは当人ばかりなり。あらためて知人友人達に指摘されて、ようやく認識している始末である。

 そもそも今回蘭が入院することになったのは、彼女がとある事件に巻き込まれてしまったことが原因だった。
 その事件とは、蘭の幼馴染である高校生探偵の工藤新一が関わっていた「厄介な事件」につながるもの。
 「厄介な事件」の黒幕であった「謎の組織」を新一が壊滅に追い込んだところ、その構成員の一人であったジンという男が新一を殺害しようと目論み、蘭はジンに浚われて新一をおびき出すための人質にされてしまった。そして・・・蘭を助けに来た新一がジンに撃ち殺されそうになっていたのを、蘭が庇って新一のかわりに撃たれてしまった のだ。

 ・・・これはあとから聞かされた話なのだが、下腹部に銃弾を受けてしまった蘭の容態は、当たり所は悪くなかったものの出血がひどく、実は一時は危険な状態であったらしい。
 新一が輸血を申し出てくれたおかげで助かったのだ、と、母の英理が言っていた。
 父も母もその場にいたのだが、二人の血液型は蘭とは違うために輸血することができず、新一がいなければ、蘭は命を落としていたのかもしれなかったのだ。

 もっとも父の小五郎は、「あの探偵ボウズの関わった事件のせいでおめーが怪我させられたんだ。それくらい、やって当然だ!」と、あまり機嫌のよろしくない顔で言っていたが。
 ・・・そして、それに関しての母の意見は、「あの人だって、ちゃんとわかっているわよ。新一君があなたを助けるために一人で危険な場所に乗り込んでいってくれたことも、あなただけを先に逃がしてくれたことも、そしてあなたが、自分の意志で新一君のところに戻ってしまったこともね。だから口ではあんなこと言ってるけど、あれでもちゃんと新一君には感謝しているのよ?」・・・というものであった。

 その感謝の前には、蘭の大出血を見て逆上した小五郎が、新一を殴り倒してしまい、それを英理が止める、というハプニングもあったらしいが、意識を失っていた蘭はそんなことは知らない。
 新一は自分の腫れた頬の原因を、事件の犯人と最後にやりあったせいだ、と蘭に説明していたし、小五郎も英理もその件に関しては蘭に報告していなかった。
 新一のせいではないとわかってはいても、娘を完全には守りきれなかった新一に対する小五郎の憤りは、こういった形でしか解消されなかったであろうし、同時にみすみす蘭に怪我をさせてしまった新一の自責の念も、小五郎に殴られるという目に見える罰を受けることによって、多少なりとも昇華されることになったであろう。
 だからこそ新一は、避けようと思えばいくらでも避けられた小五郎の拳を甘んじて受けたのだし、この行為があったからこそ、二人の間に変なわだかまりが残ることはなかった。
 ・・・そしてこのことは、新一と小五郎、英理が知っていればいいことであって、蘭に知らせる必要のない話である。

 まあそのようなわけで、九死に一生を得た蘭は傷が癒えるまでの期間、入院生活を余儀なくされ、和葉が見舞いにやってきたこの日が、その入院の第4日目というわけである。
 入院初日と2日目は、ベッドから起き上がれない蘭のために両親が付き添ってくれていたが、自分でトイレに行けるようになった昨日からはちょくちょく様子を見に来てくれてはいる ものの、とりあえず二人も日常の生活に戻っていった。

 ところがそんな入院中の蘭のところに、まったく姿を見せない人物(?)がいた。・・・コナンである。

 毛利家の居候である彼は、新一の遠い親戚の子である、ということになっている。
 両親が海外に引っ越してしまい、どうしても日本に残りたいとだだをこねるコナンを、彼の母親が養育費とともに小五郎に預けていったのだ。・・・ということに、なっている。
 少し変わったところもあるが、好奇心の旺盛なやんちゃ坊主で、よく小五郎に蘭と一緒にくっついていっては事件の現場でちょろちょろとしている危なっかしい子供。
 そんなコナンの面倒を見て、姉のように何かと世話を焼いていたのが蘭だった。
 コナンも蘭に非常によく懐いており、蘭が行くところには必ずといっていいほどコナンの姿がある・・・というのが、周囲の人々の共通の認識だったのである。

 そんなコナンが、大ケガを負って入院してしまった蘭の見舞いに、一度たりとも病室に訪れていない。
 これが、蘭とコナンが一緒にいるのを見慣れている人間の目には、妙に不自然に映っているようなのだ。
 だから、毎日顔を出している小五郎や英理も、蘭が学校を休んだ原因を聞いて飛んできた親友の園子も、事件の事情聴取のために病室を訪れた 佐藤刑事も、そして今日は和葉までもが、「コナン君は?」と、蘭にコナンの不在の理由を聞いてくる。

 そしてそのたびに、先ほど和葉に言ったような「コナンが見舞いに来ないわけ」を説明する蘭だったが、その説明を受けた人々はまた一様に、「あのコナンが蘭の一大事に、蘭のそばにいないのは不自然だ」といったような台詞を口にする。

(・・・そんなこと、言われたって、ねえ・・・)

 コナンがここに来られない本当の理由は別にあるのだが、まさかそれを正直に口にするわけにはいかない。
 よって蘭は、納得できない顔をしている見舞い客達を相手に、曖昧な笑顔で誤魔化すしかないのだった。

 今日の和葉に対しても、蘭は笑って誤魔化して、早々に話題を転換させる。

「そういえば、服部君は? 一緒に来たんじゃないの?」
「東京駅まで工藤君に迎えに来てもろてんけどな。工藤君が今から警視庁 行かなあかんて聞いたら、尻尾振ってついてきよったんよ」

 和葉が呆れ半分に、大仰にため息をつく。・・・半分は新一のせいでもあるような気がして、蘭は思わず「ごめんね」と謝罪していた。

「え、蘭ちゃんが謝るようなことやないよ! 悪いのは、東京まで来たんは蘭ちゃんのお見舞いのためやってことも忘れて飛んでった、あの推理ドアホなんやから!」
「・・・でも、きっと新一のせいもあるし・・・」
「いややわ、蘭ちゃん! 工藤君のせいやとしても、蘭ちゃんが謝ることないやん!」
「・・・え、・・・あ、そっか」

(・・・そういえばそうよね。なんでわたしが、アイツの分まで謝ってんだろ・・・)

 和葉に指摘されて、思わず苦笑が漏れる。・・・そんな蘭の様子に、なぜか和葉は嬉しそうに・・・そして好奇心たっぷりに瞳を輝かせた。

「それにしても蘭ちゃん、工藤君が帰ってきて、ほんまによかったなあ。怪我して入院してしもたて聞いてすっごい心配してたんやけど、蘭ちゃんの顔見たら、なんや楽しそうで安心したわ!」
「え、そ・・・そうかな」
「・・・ほんで?」
「え? 何が?」
「せやから、工藤君。・・・帰ってきてから、ちゃんとゆうてくれた?」
「ちゃんと、って・・・」

 何のことだろう? ・・・と一瞬首をかしげたが、和葉の「にまっ」という含みのある笑みから、それが「新一の気持ち」のことだと気づく。
 その瞬間、脳裏には「あの日」の新一の顔がまざまざと浮かび上がり・・・。

『蘭が好きだ』

 真っ赤な顔をして、でも真剣な声で、まっすぐに蘭を見つめながら、そう言ってくれた。
 思い出すだけでぼんっと体中が沸騰してしまい、蘭はこれ以上ないほど赤くなった顔でぱっと俯いてしまった。・・・その様子を見ただけで、答えは明白だったろう。

「・・・ほんまによかったなー、蘭ちゃん・・・。工藤君にはさんざん待たされて寂しい思いさせられたんやもん、その分きっちり『蘭ちゃん孝行』してもらわなあかんよ!」

 まるで自分のことのように嬉しそうに、そして真剣に言ってくれるのが嬉しくて、蘭は「うん・・・」と素直に頷いていた。
 すると和葉は、ちょっとまぶしそうな顔をする。

「・・・何か蘭ちゃん・・・幸せそうやなあ・・・」
「え、・・・そ、そう?」
「うん。前まではなんか・・・笑っててもちょっと寂しそうやったってゆうか・・・。やっぱり工藤君が帰ってくると、ぜんぜん違うんやなー」
「そ、そんなことないと思うけど・・・」

 言いながら、また顔を赤らめる蘭だった。

 確かに新一が戻ってきてから(正確には、戻ってきた、という表現は間違っているのだが・・・)の蘭は、これまでになく心穏やかに過ごしている。
 新一はあの日以来、事件の後処理だ何だと毎日のように警視庁に呼び出され、また、ずっと休学していた学校に復学したところ、これまでの遅れを取り戻すための大量の課題をプレゼントされてしまったとかで、実に多忙を極めている。
 よって蘭の病室にも一応毎日顔を見せにきてはくれるのだが、夜中にこっそりやってきて蘭の寝顔を見ただけで帰っていったり(・・・枕元に置手紙を残していくので、昨夜来てたんだな、とわかるのだが 、いったい何時に来ているのかは不明である)、学校帰りにちょっと病室を覗いただけですぐに行ってしまったりと、まともに話をする暇すらない。
 あの日、大好きだったのだと言ってキスしてくれたのが、実は夢だったのではないか・・・と蘭が思ってしまうほど、二人の間には会話らしい会話もないままに、この4日ほどが過ぎていた。
 それでも、蘭の心は穏やかで・・・どこにいるのかもわからない新一を待ちつづけていた日々を思えば、和葉の言う通り、今の蘭は確かに「幸せ」を感じているのかもしれない。

 そんな風に蘭と和葉が話をしている病室に、2人目の来訪者が現れた。

「蘭ー、また来たわよー」
「園子!」
「あ、和葉ちゃんも来てたんだ!」
「園子ちゃん、久しぶりー!」

 昨日も学校帰りに寄ってくれた園子が、今日は買物帰りに病室に顔を出した。そして昨日来たときよりも元気になっている蘭に向かって、

「あんた、回復するの早いわねー。やっぱり新一君の看病のおかげ? 愛の力ねー」

 などと、のっけからからかってくれる。

「あのねえ、新一に看病なんて、してもらってないわよ!」
「でもちゃんと毎日お見舞いには来てるんでしょ?」
「それはそうだけど、わたしがもう寝ちゃったあとで来たりとか、来てもすぐ帰っちゃうとか・・・」
「・・・寝ちゃったあと?」

 その部分に、なぜか和葉と園子は同時に鋭く反応し、顔を見合わせてにやにや笑っている。
 何かまずいことを言ってしまっただろうか、と蘭が警戒していると案の定、

「そっか、新一君、夜這いをかけてたのね・・・」
「蘭ちゃんが眠ってるのをいいことに、工藤君、何してんのやろなー・・・」
「ちょ・・・ちょっと、何言ってるのよ、二人ともっ! そんなわけないでしょ!」

 真っ赤な顔で蘭が否定しても、二人の口は止まらない。

「愛しの女房の寝顔を目の前にして新一君が何もしないで帰るなんて、ありえると思う?」
「そんなん、ありえへんよー! そこで帰ったら男やないわ」
「少なくともキスぐらいはしてるわね。もしかしたら、それ以上も・・・」
「けど、蘭ちゃん怪我人やで?」
「そりゃそうね。じゃあきっと、涙を飲んでキスだけで我慢して帰ってるのね・・・」
「だーかーらーっ! そんなことないって、言ってるでしょ!」
「あら、蘭は寝ちゃってるんだから、新一君が何かしててもわかんないじゃない。あんた、一回寝たら起きないし」
「それをいいことに工藤君・・・やらしいなあ」

 にやにや、にやにや。
 彼女達だってその現場を目撃したわけでもあるまいに、二人の妄想はもはや「確定」になってしまっている。何を言っても聞いてもらえそうもなく、蘭は頬を膨らませて二人を睨むしかなかった。
 ・・・その妄想が、実は妄想などではなくて、れっきとした「事実」であるのを知る人は・・・新一のみ、だったりするのだが。

 そうしてひとしきり蘭をからかって満足したのか、園子は思いついたように病室を見回して、話題を変えた。

「・・・そういえば、今日も来てないの?あの子」

 あの子、が指すのが誰であるのかは明白で、蘭はまたまた苦笑する。
 せっかく和葉の意識をその話題から遠ざけていたのに・・・結局、逆戻りである。

「昨日も言ったでしょ? 風邪引いちゃって、博士のうちで預かってもらってる、って」

 こんな言い訳がいつまでも通用するわけはないのだが、とりあえず今はそう言うしかなくて、蘭は和葉に告げた内容を園子にも繰り返した。

「けど、まだ1回も顔出してないんでしょ? もう4日もたってるっていうのに」
「だから、ひどい風邪で・・・」
「あんたにべったりのあのガキんちょが、いくら風邪引いてるからって、死にかけてたあんたの様子も見に来ないなんてこと、ありえると思う?」
「・・・べ・・・べったり、って・・・」

 コナンの正体が明らかとなった今となっては、赤面するしかないようなことを当たり前のように言われてしまい、蘭は言葉を詰まらせる。
 すると園子の言葉に大きく頷いた和葉までが、声のトーンを高くして同調した。

「そうそう! あたしもそう思ててん! コナン君て、蘭ちゃんが危ない目ぇにおうたりしたら、えらい勢いで飛んでくるし、蘭ちゃんの悲鳴にはものすごい反応ええし、何よりも蘭ちゃんが一番大事、って感じやん?  それやのにここにいてへんって、すっごい不自然やんか!」
「でしょー? あの子、絶対に蘭のこと好きなのよ。妙にマセてて生意気だから、美人で優しい年上のお姉さんに憧れるのもわかるけどさー・・・あ、わかった!」

 園子はぽん、と両手を打って、間違いないわ!と叫ぶように言うと、またまた自分のつっぱしり妄想を口にする。

「さてはあの子、新一君が帰ってきたのを知って、自分の居場所がなくなったと思ってここに来られないんじゃないの!? 新一くんとラブラブな蘭を見るのが辛くって、とかさ」
「あ、それ、ありそうやわ! どう考えたって、コナン君と蘭ちゃんやったら年が違いすぎるし、最初っから工藤君とは勝負にならへんもんなー」
「そう思ったら、あの生意気なガキんちょも、可哀想にねー・・・こんな高嶺の花を好きになったばっかりに・・・」
「蘭ちゃんも、罪作りやなあ」
「・・・二人とも、想像だけで話を進めるの、やめてくれない・・・?」

 蘭は二人の話に頭を抱えそうになりながら、その妄想の広がりをなんとか阻止しようとしたのだが、

「想像ちゃうよ! コナン君の好きな人って、絶対に蘭ちゃんなんやもん!」

 という和葉の言葉に、絶句する。それは・・・確かに、嘘ではないことを、蘭は知っていたから。
 けれどその事実は、ほんの4日前に本人に告げられて初めて知ったことである。それまでは蘭が思ってもみなかったことなのだ。
 にもかかわらず、そのことをさも当然のごとく断言する、友人達。蘭は恐る恐る疑問を口にした。

「ね、ねえ・・・ほんとにコナン君が、わたしのこと好きなの? なんで二人とも、そんなことがわかるの?」

 蘭の口から発せられたその疑問に和葉と園子は顔を見合わせ、そのあと口を揃えて、呆れたようにその問いに答えた。

「あのねえ。そんなの、あのコを見てれば誰だってわかるわよ」
「そうやで、蘭ちゃん。蘭ちゃんのことになったら、ものすごい必死になってんねんよ? コナン君・・・」
「ときどきあんたを見て、生意気に顔を赤らめたりしてるしさ」
「切なそー・・・に蘭ちゃん見上げてたこともあるんよ? ・・・あれは間違いなく、恋する少年の目やったわ」
「ま、新一君のことしか眼中になかったあんたのことだから、気づいてないとは思ってたけどね」

 再び蘭が赤面した理由を、二人は「新一君のことしか眼中にない・・・」の部分であると思っているようだが、もちろんそうではない。
 コナンであった新一が、傍で見ていれば誰でもわかってしまうほどに、自分を思ってくれていたのだ、とわかったから・・・。
 園子や和葉に明らかにわかってしまうほど、小さな子供の姿をしていた新一は、蘭が好きだと、蘭が大切だと、その思いを露わにしてくれていたというのだろうか・・・。

(・・・そっか、新一・・・ほんとにほんとに、ずっとわたしのこと、好きでいてくれてたんだ・・・)

 本人から告げられたときは嬉しくて舞い上がってしまっていた。
 が、その後時間が経つごとに、あれは冗談だったのでは?とか、夢の中の話だったのでは?などと、実は半信半疑になっていたのだ。・・・それというのも、多忙を理由に当の本人が、あれ以来ろくに話もしてくれず、甘い言葉一つ言ってくれないせいなのだが。
 だが、こうして第三者の意見として友人達の言葉を聞くと、新一の言葉はやはり本当のことだったのだという思いが、じんわりと蘭の胸に染み込んでくる。

(今日は、新一が来るまで、ちゃんと起きていようかな・・・)

 眠ってしまったあとにこっそりやってきて、置手紙という痕跡だけを残していく彼の訪問も、それはそれで嬉しかったりするのだが、今は無性に新一の顔が見たい気分で、蘭はこっそり、そんなことを思うのだった。
 


***
 


 病室の扉の前では二人の少年が、中に入るに入れず、途方に暮れていた。
 一人は顔を赤くして不貞腐れたような表情をしており、もう一人は赤面している少年の方を見てにやにやと笑っている。

「・・・オンナの勘っちゅーのは、あなどれんもんやなー」
「・・・ったく、あいつら・・・好き勝手言いやがって・・・」
「まちごーてないやん」
「・・・うっせーな」
「どーするんや? 中入るんか?」
「・・・やめとく」

 こんな赤面したままの顔でこの病室の中に入っては、女達の餌食にされるのが目に見えている。
 新一は平次を引きずるようにして病室の前を離れながら、今日はどんな顔をして蘭に会えばいいのか・・・と、頭を悩ませるのだった。


 

〜Fin〜


main stories へ

03/11/30 up
05/10/30 修正後、再 up

・・・・・た、楽しかった・・・・・(爆)

書いた当初も楽しんで書いてたとは思うんだけど、読み直したら実に楽しくて、嬉々として修正してたらいろいろ加筆してしまいました(笑)
真っ赤になって「くっそー・・・」と呟いてるであろう工藤さんは、実にツボですv
きっと和葉ちゃんに言われた「恋する少年の目」に対しては、ものすごーく反論したいんだろうけど(笑)、自分がコナンだとバラしたらますますからかわれそうで、結局何にも言えないんだろうなー(笑)